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1月の”ギフト”
「あなたは人生の土台に何を据えますか」
牧師  三ヶ嶋 徹

 

 奈良県の二つの保育園の理事としての働きに携わらせていただいて25年以上が経ちます。その中で、子どもたちの前で挨拶をする機会がありますが、言葉の選択で、なかなか難しさを感じます。またルーテル二葉幼稚園のチャプレンとして、今も子どもたちの前で話す機会があります。これは話す瞬間まで、ちゃんと準備をしていてもあれやこれやと悩むことが本当に多いものです。それは聞く子どもたちの状態を見て、この導入はふさわしくないとか、準備したこの言葉は理解してもらえないと言った等々です。さて、そんな中で、ゲーム機やパソコンなどの動画で慣れている子どもたちが非常に関心を持って聞いてくれるアイテムがあります。何と紙芝居なのです。声色を用いながら、臨場感たっぷりに話すと、食い入るように子どもたちは聞いてくれるのです。さて、その紙芝居の中で、子どもたちもとっても好きな「二人の大工さん」というのがあります。

 あるところに、いずれも腕自慢の大工さんがいました。ある時どちらが本当にいい腕をしているか比べてみようということになりました。設計も材料も期間も条件は同じです。二人は、それこそ腕によりをかけて頑張りそれぞれ完成させました。結果をみんなに見てもらったのですが、どちらも優劣をつけがたいということで、勝負は引き分けになりました。

 それから数年経ったある日のこと、激しい嵐が襲ってきました。あちらこちらで家が倒れたり、流されたりという被害が続出しました。さて、二人の大工さんの建てた家ですが、悲しいことに片方の家だけが倒れ、流されてしまったのです。調べたところ、原因は土台に違いがあったということが分かりました。片方は堅い岩の上に建てられており、倒れ流された家の方はなんと砂の上に建てられていたのでした。どちらが優秀な大工さんだったかは、家が嵐に遭ってみて、はじめて分かったというのです。

 さてこの紙芝居のお話は、イエス・キリストが山上の垂訓・説教(マタイ7:24~27、ルカ6:46~49)の結論として語られたところからとったものです。ここには少なくとも三つの要素が含まれていると言えるでしょう。

  1. 人生とは家を建て上げて行くようなものだということ。

  2. 人生には思いがけない嵐がやってくるものだということ。

  3. 嵐に耐えられるかどうかは土台次第だ、ということ。

 では、この土台とはどういうものなのでしょうか。

 第一に、土台は目に見えない隠れた部分ですから、人生構築の確かさは、目に見えない部分への関心度によるということを意味していると思います。聖書には「わたしたちは見えるものではなく、見えないものに目を注ぎます。見えるものは過ぎ去りますが、見えないものは永遠に存続するからです。」(コリント信徒への手紙 二 4章18節)と語られています。表面上の目に見える部分だけに捉われてしまっていても、人生を本当に左右するのは、たとい見えなくても自己の信念や、私たちクリスチャンが言う信仰が大切だということです。

 第二に、土台を据えるためには、労力や資材をつぎ込まなければならないように、目に見えない部分にそれだけの元手を賭ける覚悟が必要だということです。イエス様も、賢明な大工さんは「地面を深く掘り下げ」(ルカ6:48)土台を据えたと説明しておられます。それは、キリストの言葉を軽く聞き流すのではなく、深く受け入れて、キリストがなさったように、愛をもって人々(隣人)を支え、愛をもって語ることを意味しています。あなたの人生において、真剣に自分の生き方や、方向性について、顧みることはありますか。自分を楽しませることだけに生きてはいないか、他者のために役立つような生き方にこそ、本当の生き甲斐があるのではないかということです。少しオーバーですが、時間も労力も資材も投げ売っても惜しくはない生き方があります。この人生の土台作りには、堅固な建築の為には、時にはこのような犠牲も必要と言えるでしょう。

 最後の第三は、土台の質の問題です。一時的な見せかけの土台ではいけません。多くの人たちは、財産や学歴や能力、体力や若さなどを土台として人生を構築しようとしています。それらが何の頼りにもならないとは言いませんが、しかし、いざという時にそれらはどうなのでしょうか。あなたの人生に大きな嵐が吹き荒れる時、それらがあなたの身を本当に助けるものとなるのでしょうか?イエス様は「見えるものは過ぎ去ります」と言われました。ですから、永遠に続き、愛と希望に満ち、人を生かす神の言葉に人生の土台を築くべきなのです。「天地は滅びるが、わたしの言葉は決して滅びない」(マルコによる福音書13章31節)と、強く語られたイエス・キリストの言葉にこそ、あなたの人生を揺るぎないものとする大きな力があるのです。

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